「春望」展|2024.12.7
Exhibition Review|グループ展「春望」 2024.12.7-22
2024年12月に開催したグループ展「春望」展のキュレーターである金澤韻氏による作家解説文です。
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谷川さんの漆の作品を初めて見た時に、水彩絵具をたっぷり含んだ筆の軌跡がそのまま立体になったかのようなみずみずしさに惹きつけられました。湧き出る泉、流れ落ちる滝、そんな自然の水の流れが見せる瞬間の姿も重なります。谷川さんは、漆芸の伝統に敬意を払いつつも、器のコーティングや赤・黒といったカラーから離れ、現代の感覚や自身の個性を反映させる新しいアプローチを模索しています。その斬新な造形と、イエローやブルーといったフレッシュな色合いに「これが漆か……」と驚くばかりです。
液体である「漆」という素材の、そのままの姿を捉えることができないかと考えた、という谷川さん。樹液である漆が硬化し、形を成していく過程で、素材の特性や谷川さん自身の手の痕跡が重なり、独自の作品が生まれます。特に漆の線や形が自然に流れたように見える部分には、その瞬間に感じていたこと、考えていたことが表れているように思う、と谷川さんは言います。
「私にとって作品を作るという行為は、不確かな世界で、自分自身の実在を確かめるためのプロセスでもあります」と語る谷川さんの実践は、流動的な世界の中で、また私たち自身もその循環の一部である世界の中で、いまここに自分は“在る”のだという実感を、不定形な漆を通してかたちにすることなのだと思います。(上海ロックダウンを経験すると、「不確かな世界」は曖昧な概念ではなくて、本当のことだなと思います。)〔後略〕
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